悲しい出来事
悲しい出来事
人に物を貸す時は、返ってこなくても良いと思って貸す。
中学生の時に読んだ嶽本野ばらの「下妻物語」に
こんな風な台詞があったんだけど、「なるほどな」と思って
自分もそういう事にしてる。
本とか、CDとか、貸したままになってるものがある。
けどほとんど回収しようとした事がない。
気が向いたら返してくれたらいいけど、別に返ってこなくてもいい。
この前から人に貸したままのペンが返ってこなくて、
聞いても「返したよ」と言われてそれはちょっと悲しい。
(でも本当に返ってきてない)
600円ぐらいしたので、自分としては思い切って買ったやつなんだ。
ずっと欲しかったんだけど「600円ってなぁ」とか思って買えなくて
前の仕事でストレスが溜まっていた時に、自分へのご褒美的な感じで買ったやつだ。
スケジュール帳への書き込みとか、勉強とか、全部それを使っていたので
他のものを使うと、居心地が悪い感じがする。
600円でみみっちいかもしれないけどさ。
壊れた物。
小さな頃、自分には傷ついた物を癒す力があると思っていた。
者、じゃなくて、物。
壊れた物はかわいそうで、救ってあげたかった。
ほつれたぬいぐるみも、割れたお皿も、動かなくなったおもちゃのロボットも、
かわいそうで、それを見るだけで泣いていた。
壊れるのが嫌だから欲しくない、とも思っていた。
そういう感覚は今でもある。
底に残ったロウソクが悲しくて、夜な夜なそれらを集めて一つの塊にしている。
仲間に会えてよかったね、みたいなことを思ってる。
人間相手にはそんなこと思わないけど、ロウソクには思う。
何か小さなどこかの世界を救っている気になっているんだと思う。
指先をやけどしながらロウソクを仲間の元に返してあげる。
それぐらいの力が、他人にも向けられればいいのに。